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昨今の社会情勢を背景に、日本の中小企業にとってサイバーセキュリティは喫緊の課題となっています。ビジネスの成長にはDXの推進が不可欠であり、特に生成AIの活用は重要な要素です。しかし、DXの進展とともにサイバーセキュリティのリスクも増大するため、各局面で適切な対策を講じることが求められます。この対策は、組織の責任者のリーダーシップのもと、実務担当者が連携して実施していくことで、企業の安全なデジタル化を実現できます。
中小企業は、大企業と比較してセキュリティ対策のリソースが限られていることが多く、サイバー犯罪者にとっては比較的容易な標的となりがちです。フィッシング攻撃やランサムウェア攻撃は、これまでにない頻度で中小企業を狙っています。攻撃を受けた中小企業だけでなく、その取引先にも影響を与え、サプライチェーン全体に影響が広がることで、当該企業の業務停止による損失だけではなく、業界全体の業務が停滞するリスクがあります。
また、サイバー攻撃の被害を受けた場合、経済的損失に加えて、企業の信頼やブランド価値にも深刻な影響を与える可能性があります。特に中小企業においては、一度の攻撃で事業継続が困難になることも考えられます。こうした状況を踏まえ、中小企業がセキュリティ対策を講じることは、ビジネスの存続と発展にとって極めて重要です。
本テキストでは、中小企業の経営者やIT担当者の方々を対象に、包括的なセキュリティ対策に役立つ情報を提供します。
本書の構成は、まずサイバー攻撃の脅威や実際の被害事例を通じて、リスク認識を深めていただきます。次に、ITおよびセキュリティの基礎知識を解説し、セキュリティ対策の要点をまとめています。また、これからの我が国や社会全体の動向についても詳しく解説し、政府や業界団体の取組、特に生成AI等の最新の技術やトレンドに触れることで、最新の動向への対応力を向上させることを目指しています。さらに、中小企業におけるIT・セキュリティの課題に焦点を当て、人材不足やビジネス上のリスクに対する具体的な解決策を提示します。また、ISMS認証などの代表的なフレームワークの習得、組織内でのセキュリティ管理体制の構築や認証取得に向けた手順を解説します。
第4編以降ではレベル1~3の分類で、セキュリティ対策のレベル感ごとに説明していきます。レベル1では、緊急性の高い事例に対処する際の手法を解説します。レベル2では、ガイドラインなどを用いて、組織全体として最低限実施すべきセキュリティ対策を解説します。レベル3では、セキュリティのフレームワークを用いて、より多くの攻撃や攻撃手法に対して網羅的に対応するための事項を説明します。
最後に、組織としてセキュリティ対策を実施するための知識やスキルおよび、それらを持った人材の育成や確保といった、組織のセキュリティレベル向上を図るにあたって実践的な知識を提供します。
本書は、組織がサイバー攻撃から身を守るための重要なリソースとなりえます。セキュリティ対策の実装、教育、意識向上、最新情報の追跡など、さまざまな方法で利用することができます。
本テキストを通してセキュリティ対策を実践するために、自組織のレベルに応じて、認識すべき事項を把握した上で、参考となる章を選択した活用法が効果的です。以下のアクションに沿って本テキストを活用してください。
1.ポイントの再認識
「DXの理解からサイバーセキュリティ対策の実践まで」のポイントを再認識します。
各章の内容は以下の通りです。
以下のナビゲーションフローを参照し、自身の役割に応じた内容を確認してください。


2.関係者との共有
経営者を含めた関係者と、認識したポイントを共有します。「第10編.全体総括」をエグゼクティブサマリーとして活用してください。重要な点を理解し、経営者および他関係者と共有します。
3.社内体制の確立
経営者のリーダーシップによって、サイバーセキュリティ対策のための社内体制を確立します。知識やスキルを備えた人材の育成・確保する際は、以下を参照してください。
第9編 組織として実践するためのスキル・知識と人材育成 【レベル共通】 (第22章~第25章)
4.セキュリティ対策の実践
具体的なアクションを起こして、サイバーセキュリティ対策を実践します。情報システムの導入(企画から要件定義、調達、設計・開発、運用保守)の際は、以下の資料などを参考にセキュリティ機能を実装します。

図1. IT導入プロセスにおけるセキュリティ対策の実施タイミング