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ITスキル標準(ITSS)は、IT分野で必要とされるスキルや知識を体系化し、評価するための指標です。経済産業省が2002年に策定し、現在はIPAが管理しています。ITSSは、IT人材の育成に寄与することを目的としており、企業が共通して使用できるスキル指標を提供することで、キャリアパスの明確化やスキルの標準化に役立っています。
ITスキル標準の全体構成
ITスキル標準は、3部で構成されます。全体構成の決定に際しては、国際規格やJIS規格などの様式、記述方法を参考にしています。

図91. ITスキル標準の全体構造
(出典) IPA「デジタルスキル標準」をもとに作成
| 詳細理解のため参考となる文献(参考文献) | |
| デジタルスキル標準 | https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/skill_standard/main.html |
| デジタルスキル標準ver.1.2(PDF) | https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/dss/ps6vr700000083ki-att/000106872.pdf |
| ITスキル標準V3 | https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/index.html |
| ITスキル標準V3 2011 1部:概要編 | https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/ps6vr70000004x60-att/000024840.pdf |
「2部:キャリア編」では、ITスキル標準の構成要素である「キャリアフレームワーク」、「職種の概要」、「達成度指標」を収めています。IT人材のレベル評価は、経験と実績に基づく「達成度指標」によって行うことがITスキル標準の特色です。キャリアフレームワークは横軸に職種区分、縦軸にレベル設定があり、11の職種と35の専門分野を設けています。また、それぞれの専門分野に対応して、各個人の能力や実績に基づく7段階の達成レベルを規定しています。キャリア編で定義したのは、プロフェッショナル人材の評価を行うための指標であり、育成においては中長期のキャリア開発を行うための目標となるキャリアを示す指標です。
キャリアフレームワークの職種と専門分野
| 職種 | 専門分野 |
| マーケティング | マーケティングマネジメント |
| 販売チャネル戦略 | |
| マーケットコミュニケーション | |
| セールス | 訪問型コンサルティングサービス |
| 訪問型製品セールス | |
| メディア利用型セールス | |
| コンサルタント | インダストリ |
| ビジネスファンクション | |
| ITアーキテクト | アプリケーションアーキテクチャ |
| インテグレーションアーキテクチャ | |
| インフラストラクチャアーキテクチャ | |
| プロジェクトマネジメント | システム開発 |
| ITアウトソーシング | |
| ネットワークサービス | |
| ソフトウェア製品開発 | |
| ITスペシャリスト | プラットフォーム |
| ネットワーク | |
| データベース | |
| アプリケーション共通基盤 | |
| システム管理 | |
| セキュリティ | |
| アプリケーションスペシャリスト | 業務システム |
| 業務パッケージ | |
| ソフトウェアデベロップメント | 基本ソフト |
| ミドルソフト | |
| 応用ソフト | |
| カスタマーサービス | ハードウェア |
| ソフトウェア | |
| ファシリティマネジメント | |
| ITサービスマネジメント | 運用管理 |
| システム管理 | |
| オペレーション | |
| サービスデスク | |
| エデュケーション | 研修企画 |
| インストラクション |
(出典) IPA「ITスキル標準V3 2011 2部:キャリア編」をもとに作成
各職種の概要
| 職種 | 概要 |
| マーケティング | 顧客ニーズに対応するために、企業、事業、製品およびサービスの市場の動向を予測かつ分析し、事業戦略、販売戦略、実行計画、資金計画および販売チャネル戦略などビジネス戦略の企画および立案を実施する。市場分析などを通じて立案したビジネス戦略の投資効果、新規性、顧客満足度に責任を持つ。 |
| セールス | 顧客における経営方針を確認し、その実現のための課題解決策の提案、ビジネスプロセス改善支援およびソリューション、製品、サービスの提案を実施し成約する。顧客との良好なリレーションを確立し顧客満足度を高める。 |
| コンサルタント | 知的資産、コンサルティングメソドロジを活用し、顧客の経営戦略やビジネス戦略およびIT戦略策定へのカウンセリング、提言、助言の実施を通じて、顧客のビジネス戦略やビジョンの実現、課題解決に貢献し、IT投資の経営判断を支援する。提言がもたらす価値や効果、顧客満足度、実現可能性などに責任を持つ。 |
| ITアーキテクト | ビジネスおよびIT上の課題を分析し、ソリューションを構成する情報システム化要件として再構成する。ハードウェア、ソフトウェア関連技術(アプリケーション関連技術、メソドロジ)を活用し、顧客のビジネス戦略を実現するために情報システム全体の品質(整合性、一貫性など)を保ったITアーキテクチャを設計する。設計したアーキテクチャが課題に対するソリューションを構成することを確認するとともに、後続の開発、導入が可能であることを確認する。また、ソリューションを構成するために情報システムが満たすべき基準を明らかにする。さらに実現性に対する技術リスクについて事前に影響を評価する。 |
| プロジェクトマネジメント | プロジェクトマネジメント関連技術、ビジネスマネジメント技術を活用し、プロジェクトの提案、立上げ、計画、実行、監視コントロール、終結を実施し、計画された納入物、サービスと、その要求品質、コスト、納期に責任を持つ。 |
| ITスペシャリスト | ハードウェア、ソフトウェア関連の専門技術を活用し、顧客の環境に最適なシステム基盤の設計、構築、導入を実施する。構築したシステム基盤の非機能要件(性能、回復性、可用性など)に責任を持つ。 |
| アプリケーションスペシャリスト | 業種固有業務や汎用業務において、アプリケーション開発やパッケージ導入に関する専門技術を活用し、業務上の課題解決に関わるアプリケーションの設計、開発、構築、導入、テストおよび保守を実施する。構築したアプリケーションの品質(機能性、回復性、利便性など)に責任を持つ。 |
| ソフトウェアデベロップメント | ソフトウェアエンジニアリング技術を活用し、マーケティング戦略に基づく、市場に受け入れられるソフトウェア製品の企画、仕様決定、設計、開発を実施する。また上位レベルにおいては、ソフトウェア製品に関連したビジネス戦略の立案やコンサルテーションを実施する。開発したソフトウェア製品の機能性、信頼性などに責任を持つ。 |
| カスタマーサービス | ハードウェア、ソフトウェアに関連する専門技術を活用し、顧客の環境に最適なシステム基盤に合致したハードウェア、ソフトウェアの導入、カスタマイズ、保守(遠隔保守含む)、修理を実施するとともに、顧客のシステム基盤管理およびサポートを実施する。またIT施設インフラの設計、構築、導入および管理、運営を実施する。導入したハードウェア、ソフトウェアの品質(使用性、保守容易性など)に責任を持つ。 |
| ITサービスマネジメント | システム運用関連技術を活用し、サービスレベルの設計を行い顧客と合意されたサービスレベルアグリーメント(SLA)に基づき、システム運用リスク管理の側面からシステム全体の安定稼動に責任を持つ。システム全体の安定稼動を目指し、安全性、信頼性、効率性を追及する。またサービスレベルの維持、向上を図るためにシステム稼動情報の収集と分析を実施し、システム基盤管理も含めた運用管理を行う。 |
| エデュケーション | 担当分野の専門技術と研修に関連する専門技術を活用し、ユーザーのスキル開発要件に合致した研修カリキュラムや研修コースのニーズの分析、設計、開発、運営、評価を実施する。 |
| 共通(レベル1、2) | 担当業務の技術領域に関する基本知識を活用し、上位者の指示の下、あるいは既存の作業標準やガイダンスにしたがい、要求された作業を実施する。自らの担当作業に対する実施責任を持つ。 |
(出典) IPA「ITスキル標準V3 2011 2部:キャリア編」をもとに作成
達成度指標
達成度指標は、実務能力のレベル評価指標として定義したものです。ITスキル標準では、IT人材のレベル評価は、経験と実績に基づく「達成度指標」によって行います。達成度指標は、ビジネスを成功させる人材を評価する2つの貢献に焦点を当てています。「ビジネス貢献」とは、プロジェクトの成功の経験と実績など、ビジネス成果に対する貢献を示します。「プロフェッショナル貢献」とは、専門技術の向上による社内外への貢献、さらに後進育成や技術の継承といったプロフェッショナルとしての貢献を示します。

図92. 達成度指標の構造
(出典) IPA「ITスキル標準V3 2011 2部:キャリア編」をもとに作成
| レベル\要素 | ビジネス貢献 | プロフェッショナル貢献 | ||||
| 責任性 | 実績回数 | 専門性の発揮度 | 技術の継承実績 | 後進育成 | ||
| 7 | チームの責任者として他をリード | 3回以上 | 専門領域に関して他を指導できる高度な専門性保有し、業界をリードしている | 5項以上 | ⚫︎ 学会、委員会などプフェッショナルコミュニティ活動
⚫︎ 著書 ⚫︎ 社外論文掲載⚫︎ 社内論文掲載 ⚫︎ 社外講師 ⚫︎ 社内講師 ⚫︎ 特許出願 |
必須 |
| 6 | 3回以上 | 専門領域に関して他を指導できる高度な専門性保有し、業界に貢献している | 4項以上 | |||
| 5 | 3回以上 | 専門領域に関して他を指導できる高度な専門性保有し、社内に貢献している | 3項以上 | |||
| 4 | チームのリーダー | 2回以上 | 専門領域に関して高度の専門性保有し、後進を指導している | 1項以上 | ||
| 3 | メンバー | 1回以上 | 専門領域に関して専門性を保有し、独力で実践している | – | – | |
| 2 | 専門性を踏まえて活動を実施 | |||||
| 1 | ||||||
(出典) IPA「ITスキル標準V3 2011 2部:キャリア編」をもとに作成
ITスキル標準では、ビジネス貢献とプロフェッショナル貢献の両方が重視されています。IT人材は、ビジネス貢献、およびプロフェッショナル貢献という達成度指標で定められた基準を同時に満たしていることが必要です。
| 詳細理解のため参考となる文献(参考文献) | |
| IPA ITスキル標準V3 | https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/index.html |
| ITスキル標準V3 2011 2部:キャリア編(PDF) | https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/ps6vr70000004x60-att/000024842.pdf |
「3部:スキル編」では、ITスキル標準で定義されているすべてのスキル項目、知識項目を網羅した「スキルディクショナリ」、職種ごとにスキル項目、知識項目を整理した「スキル領域」と「スキル熟達度」、およびITスキル標準に対応して習得すべき研修科目を職種ごとに明示した「研修ロードマップ」を収めています。スキル編は、達成度指標に示す経験と実績を遂行するために必要な能力を整理したものであり、教育や訓練の設計を行う際の指標として活用するものです。
以下の表は、各職種に求められるスキルの中からセキュリティに関連するスキルを抜き出したものです。
| 各職種に求められるセキュリティに関するスキル | |
| 全職種共通 | ⚫︎ プロジェクト・リスク・マネジメント |
| マーケティング | ⚫︎ 関連法規に関する知識 |
| セールス | ⚫︎ 最新技術動向 |
| コンサルタント | ⚫︎ ビジネスモデルのリスクコントロールの評価
⚫︎ 最新ソリューションの動向 ⚫︎ 情報技術動向の調査 |
| ITアーキテクト | ⚫︎ 関連技術(IT)動向の把握
⚫︎ 統合要件の定義 ⚫︎ インフラストラクチャー要件(主に非機能要件)の定義 ⚫︎ インフラストラクチャアーキテクチャ設計 |
| プロジェクトマネジメント | ⚫︎ ソフトウェアエンジニアリング
⚫︎ 最新技術動向 ⚫︎ セキュリティシステムの実装・検査 ⚫︎ ネットワーク技術の理解と応用 ⚫︎ ネットワークシステムの運用、保守、管理 ⚫︎ リスクマネジメント計画 ⚫︎ リスク識別 ⚫︎ 定性的リスク分析 ⚫︎ 定量的リスク分析 ⚫︎ リスク対応計画 ⚫︎ リスクの監視コントロール |
| ITスペシャリスト | ⚫︎ 最新技術動向
⚫︎ ネットワーク技術の理解と応用 ⚫︎ インターネット技術 ⚫︎ セキュリティと個人情報 ⚫︎ IT基盤構築プロセス ⚫︎ システム非機能要件基礎 ⚫︎ コンプライアンスと法規 ⚫︎ プラットフォーム要件定義手法 ⚫︎ プラットフォーム設計手法 ⚫︎ ネットワークシステムの運用・保守・管理 ⚫︎ 物理データベースの設計技術 ⚫︎ データベース関連製品の利用技術 ⚫︎ データベース開発における重要技術 ⚫︎ アプリケーション共通基盤要件定義手法 ⚫︎ アプリケーション共通基盤設計手法 ⚫︎ セキュリティ方針の策定 ⚫︎ セキュリティ対策基準の策定 ⚫︎ セキュリティシステムの計画策定 ⚫︎ セキュリティシステムの要件定義 ⚫︎ セキュリティシステムの設計 ⚫︎ セキュリティシステムの実装・検査 ⚫︎ セキュリティシステム導入支援 ⚫︎ セキュリティシステムの運用管理 ⚫︎ セキュリティ障害(事件事故/インシデント)管理 ⚫︎ セキュリティの分析 ⚫︎ セキュリティの見直し(セキュリティシステムの評価と改善) ⚫︎ 情報セキュリティ監査の実施・支援 ⚫︎ セキュリティシステムの実装・検査 ⚫︎ 業界固有のセキュリティ要件・事例 ⚫︎ コンサルティングの実施 ⚫︎ セキュリティ技術動向 ⚫︎ セキュリティと個人情報 ⚫︎ コンピュータ・フォレンジック(証拠保全追跡) |
| アプリケーションスペシャリスト | ⚫︎ 最新技術動向
⚫︎ ネットワーク技術の理解と応用 ⚫︎ インターネット技術 ⚫︎ システム管理手法 ⚫︎ データベース開発における重要技術 ⚫︎ アプリケーションセキュリティ ⚫︎ セキュリティ技術の理解と応用 ⚫︎ セキュリティ技術動向 ⚫︎ セキュリティシステムの実装、検査 ⚫︎ セキュリティとプライバシー |
| ソフトウェアデベロップメント | ⚫︎ セキュリティシステムの実践、検査
⚫︎ セキュリティとプライバシー ⚫︎ 最新技術動向 ⚫︎ ネットワーク技術の理解と応用 ⚫︎ インターネット技術 ⚫︎ アプリケーションセキュリティ ⚫︎ 適合すべき標準の選定 ⚫︎ リスク管理基礎 |
| カスタマーサービス | ⚫︎ 最新技術動向
⚫︎ インターネット技術 ⚫︎ セキュリティとプライバシー ⚫︎ ネットワーク技術の理解と応用 ⚫︎ 関連国際標準および関連規格 ⚫︎ お客様サポート ⚫︎ 改善提案 ⚫︎ ストレージ技術 ⚫︎ データベース技術 ⚫︎ セキュリティ技術 ⚫︎ メンテナンスの準備 ⚫︎ セキュリティ管理 |
| ITサービスマネジメント | ⚫︎ 基準と標準
⚫︎ 人材育成 ⚫︎ 資産管理 ⚫︎ セキュリティとプライバシー ⚫︎ システム運用管理手法 ⚫︎ リスク管理 ⚫︎ セキュリティ管理 ⚫︎ インシデント管理 ⚫︎ 問題管理 ⚫︎ 変更管理 ⚫︎ リリース情報 ⚫︎ 構成管理 ⚫︎ ネットワークシステム管理 ⚫︎ セキュリティ技術 ⚫︎ 最新セキュリティ情報の収集 |
| エデュケーション | ⚫︎ 最新技術動向 |
(出典) IPA「ITスキル標準V3 2011 スキルディクショナリ_20120326」をもとに作成
| 詳細理解のため参考となる文献(参考文献) | |
| ITスキル標準V3 | https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/index.html |
| ITスキル標準V3 2011 3部:スキル編 | https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/ps6vr70000004x60-att/000024844.pdf |
| ITスキル標準V3 2011 スキルディクショナリ_20120326 | https://www.ipa.go.jp/jinzai/skill-standard/plus-it-ui/itss/ps6vr70000004x60-att/000024846.pdf |